一年中16℃の低温となる工場の地下を
水の冷却に利用できないか
- Interviewee Profile
- 取締役 製造統括 舩木 敏勝
1983年、新卒採用にて当社入社。印刷工場のオペレーターに配属。オペレーション経験を積み重ね、印刷物製造に関する専門知識を深め、1999年には本庄工場の設計に関与。現在は、印刷工場全体を統括する立場として、設備稼動、人材のマネジメントを行っています。
一年中16℃の低温となる工場の地下を
水の冷却に利用できないか
震災後の電力不足に対し、直後に早急な対応が必要でした。
2011年3月の東日本大震災ののち、全国的に電力が不足し、当社にも節電の協力要請がありました。電気の使用を抑えたい気持ちがある一方、印刷機を止める訳にはいきません。「この夏の生産を乗り切れるだろうか」という状況の中、持続可能な生産活動を維持するために2011年6月に考案しました。
エネルギーを全く使用せずに地熱を利用する自然冷却装置です。
輪転機で、最も電力を使用するのが冷却水発生装置です。高速で稼働する輪転機では、機械の温度を一定に保つため、輪転機内に常に22℃の冷却水を循環させています。22℃の水は輪転機の熱を冷ますと、28℃に熱されて戻ってくるのですが、それを再び22℃に冷やして送り出すには、6℃近く水温を下げる必要があります。私たちは、この電力を抑えようと知恵を絞りました。
この設備では、輪転機から戻ってくる28℃の水を、年間を通して16℃程度の低温に保たれる地下にめぐらせた全長120メートルのパイプラインに5分程度通すことにより、2℃下げてから冷却水発生装置に戻します。
震災後の夏、20%の節電を実現することができました。
冷却に多くの電力を消費する暑い夏場を中心に大きな効果を上げ、設置した冷却装置では、2012年3月期に前期比20%の節電を実現しました。工事は、5×25メートルプール程度の穴を2.5メートルの深さまで掘る大掛かりなものでしたが、効果も大きく、同様の節電対応で悩む他社の工場からも取材がありました。エネルギーを使用せずに自然の力を利用するシンプルな設備で、次世代型の地球にやさしいエコファクトリーをめざしています。